著者からのメッセージ
私は今年、63歳にして、生まれて初めて本を書きました。
テーマとして「商品開発」を選んだ経緯について、少し説明させてください。
もう20年以上前のことですが、私は商品開発業務に従事していました。イントレプレナー(企業内起業家)と言えばカッコいいですが、その中身はと言えば、全てが手探りで苦労の連続でした。
何しろ入社の数年前まで「公社」だったこの会社は、もともとマーケティング体質からほど遠く、ノウハウの蓄積もなければ、ゼロイチ(0→1、新たな価値をゼロから創造すること)の文化も希薄だったからです。
商品開発というのは、コンセプト立案からデリバリまで、あらゆる工程が前例のない応用問題な訳です。既存商品の売り上げを伸ばす「通常業務」とは、検討項目も違うし、要求されるマインドやスキルセットも、真逆ぐらい違います。

本書は、30年前の自分に向けて語りかけるつもりで、執筆しました。当時の自分の苦労を振り返ると、誰かに導いてもらったら業務効率的にも精神的にも随分助かったはずだ、と思うからです。
ですから、現在「新規事業開発室」などに所属していて、商品開発に孤軍奮闘する社員の方々にこの本が届いたら、大変嬉しく思います。もちろん、起業したての個人事業主や、長年会社を支えてきた商品やサービスを見直すタイミングにある企業の経営者など、商品開発が思いどおりに上手くいかずもがき苦しんでいる方であれば、同様にヒントを見つけてもらえる本だと自負しています。
内容も、自分の実体験に基づき、商品開発のリアルについて記述したつもりです。実践の中でつまづきやすいポイントやリカバリのためのヒントを、できるだけ生々しくキレイゴト抜きに綴りました。

ところで、こうして商品開発という業務を説明しても、すごくマニアックで「自分には関係ない世界だ」と思われるかもしれません。でも、それがそうでもないのです。

10年ほど前のこと。イントレプレナーだった私は、「商品開発部隊を大幅縮小する」と経営方針を転換したタイミングで、その大企業を辞めました。
大企業の社員の立場では思うようにいかなかったことばかりだったので、「自由なフィールドで勝負できる、もし失敗しても市場から突き付けられた結論ならば納得できる、社内論理で潰されるよりずっと健全だ!」と、腐ることもなく寧ろ意気揚々と、早期退職を決意したのでした。しかしながら、新たなキャリアは、いきなりつまづきます。

早期退職後スカウトされたのは、ベンチャーの雇われCOOでした。そのベンチャーは、イスラエルのスタートアップが持つ国際ビジネスモデル特許を、国内展開する日本フランチャイジー。大企業内にあってベンチャーとの協業経験があり、BtoBtoCサービスプラットフォームのプロダクトオーナーを経験した人材は、この会社にピッタリだったことでしょう。私としても、大企業の「塩抜き」ができる理想的なポジションだと思いました。まさに相思相愛で、幸せなセカンドキャリアとなるはずでしたが、その会社は資金ショートを起こし、何と、わずか1年で業務を清算することになります。
別企業に再就職する気になれなかった私が次に選んだ道は、独立でした。と言っても、当初は、モノ売りでの起業です。仕入れを伴い利益率が低く、しかも物流なども絡むモノ売りビジネスは、ただでさえ難易度が高い。少なくとも、起業一発目で手掛けるべきビジネスモデルではありません。浅はかな選択で、今から考えれば恥ずかしさの極みですが、当時は何故か「起業するならモノ売り」と思い込んでいました。
無店舗、かつ在庫リスクは負わないよう工夫した「ECでのBtoC小売業」でしたが、案の定苦戦します。最終的には、消費増税(2019年10月)とパンデミック(2020年)のダブルパンチが決定打となり、商売を畳まざるを得ませんでした。こうして、皆さんが経験するような挫折を、ジェットコースターのように短期間でほとんど味わいました(笑)
特に、経営者の立場で様々な困難に直面する中、商品開発の難しさを改めて痛感するに至ります。私は、その後スタートさせたコンサル業でも、思うように商品開発ができないで苦しんでいる経営者の方々を、「経営企画室長代行」的なポジションから伴走・手助けしてきました。商品開発というのは、ゼロイチ的イノベーションを起こし不連続な成長を図らなければならない経営課題そのものであり、その苦労を理解しているだけに、そこに何とか貢献する方法を模索してきました。

ですから、あなたにも、自分には関係ない世界だと思わずに「企業の継続的な成長や発展の礎には必ず新規商品開発の苦労がある」ことを、広く知てもらいたいのです。大企業でも、必ずしも上手くいってる訳ではありません。ですが、私が30年間大企業にいたからこそ体験し培ったノウハウは、余さずお伝えしたい。その上で、競争力のある商品をみんなで開発できれば、日本の経済はもう少し元気になるんじゃないかと思うのです。
日本の経済を支えてるのは中小企業、中堅会社です。その足腰が弱くなってしまって、今世界から遅れているのが、とても残念。そういう状況を少しでも改善するために、自分も貢献したい。

本書の最終章では、国内外のすごいDXの実例をひもといています。これは、「DX(業務改革)を突き詰めていったら、スゴいビジネスモデルができちゃった」というような事例集なのですが、支援しているクライアントさまに「最新のビジネスモデル研究」研修を実施した際に好評だった事例の中から、特に8社を厳選したものです。第4章までの堅苦しい内容とは対照的に、個別具体的な開発ストーリーとして興味深いと思いますので、この章から読み始めるのもアリです。いずれにせよ、商品開発業務のことを少しでも理解していただけたら、こんなに嬉しいことはありません。
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